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<福岡2020レポート>「産物(product)ではなく、過程(process)としての“文化”を享受する」/ラテン文化センター『ティエンポ』 サンティアゴ・エレーラさん インタビュー

at 2020/07/27

福岡の “いま” を伝える情報コラム <福岡2020レポート> 。

今回は「産物(product)ではなく、過程(process)としての“文化”を享受する」と題してラテン文化センター『ティエンポ』の理事長 サンティアゴ・エレーラさんへのインタビューをお届けします。


――はじめに、『ティエンポ』について教えていただけますか?

『ティエンポ』は、ダンス・アート・音楽・言語・食といった様々な角度から文化の多様性を体験し、交流を深めることを目的として、1997年(平成9年)5月、設立メンバー15 名・会員50 名で活動をスタートしました。設立当初は薬院六角近くの古い一軒家を自分たちで手直しして活動拠点としていましたが、活動規模の拡大に伴い2001年(平成13年)に薬院六角から天神2丁目へセンターを移転。そして、ちょうど今から10年前の2010年(平成22年)6月に、現在の「大名11511ビル」に移転しました。

『ティエンポ』の活動は<講座><国際交流事業><社交・芸術・食文化交流事業>の三つの事業を柱としています。

まず<講座>については、スペイン語、ポルトガル語、イタリア語の語学スクールのほか、アルゼンチンタンゴ、フラメンコ、サルサ、アラビアンダンスなどのレッスンを行っています。こうした多岐にわたるジャンルが複合的に学べるラテン文化センターは、国内ではここ『ティエンポ』が唯一であり、それぞれのジャンルに携わる人たちにとっては、一つの「聖地」のような存在になっています。


<国際交流事業>としては、国際交流イベントやフェスティバルやコンサート またタンゴ・フラメンコ・サルサなど、ジャンルやテーマを特化したパーティーを週末定期的に開催しており、レッスンの講師を務めるプロの演者のパフォーマンスを堪能するとともに、生徒さんたちがレッスンの成果を披露し仲間同士で交流する場となっています。

また、団体設立当初より、アジア最大の野外ラテンフェスティバル「イスラ・デ・サルサ」や、そのゲストとして海外から招いたオーケストラによる全国ツアー「ビベラ!サルサツアー」を開催し、時にはアジアや太平洋諸国にも渡りました。この年次ツアーの忘れがたいコンサートは、Los Van Van(ロス・バン・バン)のシドニー・オペラハウス公演です。

2014年(平成26年)からはタンゴの魅力を通して異文化交流が体験できる「桜タンゴフェスティバル」を毎年桜の時期に開催しており、国内はもとよりアジア、ヨーロッパ各地からダンサーやミュージシャン、タンゴ愛好家が福岡に集結します。


そして<社交・芸術・食文化交流事業>の拠点となっているのが、「大名11511ビル」5階にあるカフェレストラン「サンチョ・パンサ」と3階にあるギャラリー「エル・タジェール」です。

「サンチョ・パンサ」では、本場から招いたシェフによるスペイン・中南米の本格的家庭料理をラテンの空気が感じられる店内や緑に囲まれた開放的なテラスで味わうことができ、ラテンギターライブや週末の夜はミニダンスショーを鑑賞しながらのディナーも楽しめます。また、「エル・タジェール」では現代アートの展覧会のほか、アートを通じたワークショップや交流イベントを開催しています。


――サンティアゴさんが福岡を拠点として、こうした多彩な活動に携わるようになったきっかけを教えていただけますか?

私はアメリカのシアトルで生まれ、学生時代はアルゼンチンのブエノスアイレスで過ごしました。23歳のとき、世界を自分の目で見たいと思い立ち、バックパックを背負って、南北アメリカ、旧ソビエト、アジア、中東、アフリカなど、3年間で40か国を巡る旅をしました。その旅の途中で知り合ったスウェーデン人の友達が福岡で英語を教えていたので、彼に会うためにこの地を訪れました。

その滞在中、彼の知人の紹介で「囲碁」に出会い、その世界観に魅了されました。囲碁にはチェスなどに見られるアグレッシブな要素がありません。敵を直接的に倒すのではなく、全体のバランスを見ながら陣地を広げていくという、アジア的というか日本的というか、個人の主義・主張より「Social-Harmony(社会的調和)」を重んじる価値観に通じるところにも興味を抱きました。

3年間にわたる旅を終え、囲碁の世界をさらに深掘りしたいという思いが募り、1993年(平成5年)に再び福岡を訪れ、スペイン語を教えながら、毎日6時間碁盤と向き合う生活を始めました。

そうしたなか、1995年(平成7年)に福岡市で開催されたユニバーシアードの組織委員会の一員としてスペイン語とポルトガル語圏の業務に従事する機会があり、市民の皆さんと活動・交流するなかで、イベロアメリカ(ラテンアメリカとその旧宗主国であるスペイン・ポルトガル)の文化に興味を持つ人たちのコミュニティが広がっていきました。そして、もっと深い経験ができたらと有志メンバーで立ちあげたのが『ティエンポ』でした。


――サンティアゴさんにとって、『ティエンポ』はどのような場所ですか?

『ティエンポ』は「ラテン文化センター」と称していますが、「異文化センター」の方が私自身のイメージに近いかもしれません。地球上で中南米ほど多様な人種や文化が混ざり合っている地域は他にないと思います。異文化への寛容性も高く、その典型例が大統領の人種にも現れていて、ペルーの元大統領のフジモリ氏は日系でしたし、アルゼンチン元大統領-カルロス・メネムはシリア系、ボリビア前大統領のエボ・モラレスはアイマラ系でした。

『ティエンポ』の主要イベントの一つ「イスラ・デ・サルサ」の「サルサ」は英語でいう「ソース」。混ぜるとか混ざり合ったもの、という意味です。「イスラ・デ・サルサ」では、アジアやアフリカなどイベロアメリカ以外の音楽や音楽家も紹介しており、『ティエンポ』はそうした文化の混ざり合い、融合を通して、文化が進化する場所だと思っています。


――ひとことで“文化”といってもなかなか掴みどころがない概念だと思うのですが・・・。

文化とは地域や社会が内包するものではなく、あくまで個人のものだと考えています。いろいろな経験をしながらアイデンティティを育んでいく過程で、一人ひとりの心の中に芽生えていくのが文化ではないかと。

そして、文化は単なる相互作用の産物(product)というよりも、時を経て発展し続ける過程(process)だと考えています。先人が形づくった文化は大切な宝物に思えるかもしれませんが、時代や社会環境の変容に合わせて、自分の代で文化のかたちが変わることを恐れないことが大事だと思います。

また、文化を広め、永続させるためには、何より「動き」を生み出すことが大事です。自ら動くことで経済がついてくるのです。「思いが動きになり、動きが経済を作ることで文化が永らえていく」そうした考え方が『ティエンポ』の活動の根っこにあると私は考えています。

昨年から今年にかけては、NHK-Eテレの語学番組「旅するスペイン語」に旅のパートナーとしてレギュラー出演したり、東京五輪開催に合わせて世界最大のスポーツ専門チャンネル「ESPN」が企画した、日本を紹介する番組の現地プロダクションを担ったりと、新たな試みにチャレンジしています。初めての現場は困難も多いのですが、それを大きく上回る経験や人々との出会いがあり、とてもやりがいを感じます。

――いままさに時代の変革期を迎えていますが、サンティアゴさんはどのようにお考えでしょうか? 

いくつか思い浮かぶキーワードがあり、その一つが「Uncertainty(不確実性)」です。まさに新型コロナウイルスで世界中がパニックになっている今、現実というのが極めて不確実なものだということを皆が実感していることでしょう。それに慣れていく必要があると思います。また、だからこそ “今” を大切にしないといけない、とも言えるでしょう。

ペースダウンも必要かもしれません。『ティエンポ』とは、スペイン語で『時』を意味します。文化について語る際、『時間』は極めて重要な役割を担っています。異なる文化を引き合わせ、文化の懸け橋を作り、そして文化間の相互作用の関係を持続させるには時間がかかるのです。


もう一つのキーワードが「Contingency(偶然性・偶発性)」です。2009年(平成9年)、ラテン音楽界のスーパースターであるフアン・ルイス・ゲラが「イスラ・デ・サルサ」に登場しました。彼にとって訪日は長年の夢であり、彼の祖国であるドミニカ共和国のバックアップにより実現したものでした。その年の「イスラ・デ・サルサ」は、「シーサイドももち」の特設会場での開催でした。当日は朝からあいにくの雨模様でしたが、フェスが始まると同時に雲間から日が差し、彼がフェスの最後の演者としてステージに立ったとき、美しい夕陽に会場が包まれました。フェスが終わり出演者やスタッフによる打ち上げが会場近くのホテルで行われたのですが、彼は姿を現しませんでした。あとから分かったことですが、彼はそのときホテルの自室にこもって、曲作りを行っていたのです。

その「バチャータ・エン・フクオカ」という福岡滞在中の思い出と感謝の気持ちが詰まった曲は、その翌年11月にラスベガスで行なわれた第11回ラテン・グラミー授賞式で「最優秀トロピカル・ソング」を受賞。ラテン語圏の人々にとって、日本の「フクオカ」はとても有名で、いまでもこの曲が生まれた場所を訪れたい、滞在したいと、旅行や留学で福岡を訪れる人は後を絶ちません。こうした予測不可能な偶然の出来事こそ人生を豊かにするものであり、そうしたチャンスをつかむには先ほど申したように自発的な「動き」が必要だと思います。


最後に「Non-verbalCommunication(非言語コミュニケーション)」の重要性を挙げたいと思います。指揮者でピアニストのダニエル・バレンボイム氏はアルゼンチンのブエノスアイレス生まれのロシア系ユダヤ人で、イスラエルとパレスチナの音楽家で構成したオーケストラの演奏会を企画したことでも知られています。「文化的・歴史的背景が異なる民族同士では、言語を介して接すると衝突や誤解が生じかねないが、逆に音楽やダンスのような非言語コミュニケーションを使うと、まるで橋が架かるように双方が近づくことができる。」と述べています。そうした非言語コミュニケーションの重要性を感じながら、『ティエンポ』が提供する音楽やダンスを通じた文化交流や教育活動を通して、国境を越えた人と人とのつながりをつくっていけたらと考えています。

――本日は貴重なお話をお聞かせいただき、本当にありがとうございました。

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[取材・編集]  西山健太郎(福岡観光コンベンションビューロー マーケティングマネージャー)

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